55 螺鈿箱 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

55 螺鈿箱(らでんはこ)(中倉88)
ヒノキ製黒漆塗り、印籠蓋造。
文様は、蓋の表に八弁唐花を中心にして、八枝の花卉文(かきもん)を廻らし、蓋の縁は、花卉と雲、身の縁は、花卉と飛鳥を六箇ずつ交互に配している。文様は、毛彫りを施した螺鈿であるが、正倉院宝物中で数少ない漆地螺鈿の遺例の一つである。蓋の表、中央の六花弁だけは、金の裁文を貼り、これに漆をかけて乾固後、文様の上の漆塗膜だけを剝ぎ取ったいわゆる平脱であって、これも毛彫りがある。また、花芯には、すべて半球形の水晶を嵌め、その下に赤、青などの顔料の地に小四弁花絵を描き、水晶をすかして下の文様が透視出来るようにした、いわゆる伏彩色である。蓋の表の側面の周りに、数個見える粒上の小突起は、花卉文の花芯の中心にはめ込まれた水晶である。
また、箱の内部のうちばりは、紙の心で、表はうんげんの錦である。この錦は、白、赤、薄赤、茶、藍、緑などのうんげん地に小花葉文を配した経錦(たてにしき)である。
中央縹・紫・紺の縞の幅1.3cm 赤紫縞の幅1.7cm
朝日新聞社「正倉院宝物 中倉」より引用

商品説明


仕様
55 螺鈿箱 より
円(税込)