44 緑地花鳥文錦 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

44 緑地花鳥文錦(みどりじかちょうもんにしき) (南倉145-1)
緑地に、花心が緑の四弁花を中心にして周りに白の連珠を回らせた形で、花弁が緑に白縁の三葉形風の文様を最も内側に配し、その外側を順に赤・白または薄紅として、最も外側に白または薄紅の花弁を覗かせている六弁花文を縦方向は真直ぐに、横方向は互い違いになるように配置している。六弁花文の縦列に挟まれた間地は、白地で所々赤に彩った瑶珞をS字型に連ねたようなジグザグの飾りで埋め、各各の瑶珞の中心を斜め上下から銜えるような二羽の飛鳥を配しており、六弁花文に上下を挟まれた間地は、白または薄紅に白縁の四弁花文を置いている。複様三枚綾組織の経錦である。
六弁花文大縦 約5.7cm 横約6.2cm
44 緑地花鳥文錦 より
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