28 紫地錦几褥 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

28 紫地錦几褥(むらさきじにしきのつくえのじょく)(南倉150 褥類第25号)
机の敷物で、白、薄紫、紫の暈繝の組紐を鎖状に組んだ帯で、中央の鏡の部分と縁を額縁様に区画している。鏡の錦は、茶紫地に、黄色で丸い唐花の主文と菱形花文の副文を交互においてその空間に花卉、蝶、唐獅子などを配している。この錦は、同じ模様の裂が聖武天皇一周忌斎会の幡に多く用いられていることから、日本製と考えられるが、柔らかな感じの唐草や獅子の様子から見て、唐風の和様化の傾向のあることが指摘されている。
縦107cm 幅52.5cm
日経新聞社「正倉院の文様」より引用

28 紫地錦几褥 より
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