14 紫檀木画箱 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

14 紫檀木画箱(したんもくがのはこ)(中倉145)
紫檀木画箱と呼ばれる献物箱は、いま中倉に二合あるが、これはその一つ。長方形、床脚つきの箱で、蓋・身ともケヤキと思われる心材に紫檀の薄板張りとし、矢筈(やはず)文・甃(いしだたみ)文を組み合わせた木画をもって全体を加飾している。また各稜角や紫檀の周囲など、木画の両側に当たる部分には象牙の界線がほどこされており、紫檀版は象牙の二重枠に囲われているように見える。
 蓋は、内側四隅に蓋懸りの舌を備えた印籠蓋造で、蓋表は木画の帯によって内区と外区に区画され、その周囲は緩やかに面をとっている。また、蓋・身の四側面は前述の木画を廻らして、長側は四区、短側は二区の区画を持つ意匠となっている。
 床脚も紫檀貼り。長側に四つ、短側は二つの香狭間を透かして、刳り面に象牙を貼る。畳摺は上面を紫檀貼りと甃文木画、外側面を矢筈文木画で飾り、象牙の界線で縁を取る。内面・底裏は甃文木画で町型界線を立て、黄楊木の薄板張りとしているが、内外綿とも、身の方に補修部分が多い。木画の構成要素としては、象牙・黒柿・花櫚・黄楊木のほか、現在では朽損して殆ど確認できないが、金属の錫が用いられていることがX線分析の結果明らかとなった。木画はこれらの材料を精密に組み合わせて構成されており、矢筈文の向の変化で合口を示すなど、意匠上の細かい配慮があったことがうかがえる。
縦23.3㎝ 横42.3㎝ 蓋の高さ5.9㎝ 身の高さは床脚友9.4㎝ 総高15.3㎝
朝日新聞社「正倉院宝物 中倉」より引用
14 紫檀木画箱 より
円(税込)