13 蘇芳地彩絵箱 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

13 蘇芳地彩絵箱(すおうじさいえのはこ)(中倉90)
スギ製、印籠蓋造、香狭間を透かした床脚付の献物箱である。蓋・身とも全面褐色に塗って、これに種、白、緑の細粉を吹き付けて下地とし、白、橙、赤、緑、紫、青などで彩絵を施している。その図様は、蓋表中央に集合大花葉文を置き、四周に花葉文を配したもので、四側にもまた同種の花葉文を描いている。
蓋と身の押し縁のは金悪を押し、これに玳瑁張りになぞらえて、蘇芳色と墨で斑を描いた、いわゆる仮玳瑁の意匠を施し、床脚、畳摺もまた金箔押しのうえ、前面に墨で忍冬唐草文を描いて、毛彫り金具に擬している。内部は浅緑色に塗り、底裏は丹塗りでともに無地。
X線分析の結果、地の褐色はベンガラ、白は胡粉(塩化物系鉛化合物)、丹は鉛丹、赤は水銀朱、緑あ岩緑青、青は岩群青であることが確認された。挿図は、赤海の模型図である。 
縦38.5㎝ 横35.1㎝ 蓋の高さ4.5㎝ 身の高さは床脚とも9.8㎝ 総高14.3㎝
朝日新聞社「正倉院宝物 中倉」より引用
13 蘇芳地彩絵箱 より
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