85 平螺鈿背円鏡 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

85 平螺鈿背円鏡(ひららでんはいのえんきょう) (北倉42)
本鏡は寛喜二年の盗難により破損したのを明治三十年に接合復元したものである。背面の螺鈿も多く新補されたものであるが、全体の図様はごく一部に残った旧態から復元されたものらしい。螺鈿飾りの鈕を中心に四方に花文、その周りに蕾状の螺鈿を連珠文様に回らせ、その外に四方に花文、その間に小花文と方形桝形文を置く。 旧態をとどめる第11号、 第13号に比べると気のせいか図様全体が甘く感じられる。
径27.3cm
日経新聞社「正倉院の文様」より引用
85 平螺鈿背円鏡 より
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