70 亀甲花文錦 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

70 橡地亀甲花文錦(つるばみじきっこうかもんのにしき)(南倉150)
複様三枚綾組織の緯錦である。経は浅紅。
亀甲繋ぎの枠内に便化した花文を置いた簡単な図様である。亀甲は横長に織りあらわされている。
二色錦で、文様は白、地は橡 色を呈するが、もとは紅であったかと考えられる。
朝日新聞社「正倉院宝物 染織」より引用
70 紫地亀甲花文錦(むらさきじきっこうかもんのにしき)(南倉150)
複様三枚綾組織の経錦である。緯は紫。
亀甲繋ぎのなかに四弁花をおさめた図様で、亀甲線上には珠文を連ねる。四弁花は忍冬花文風である。
いろだて地は紫、文様は緑・黄・浅紅・白の五色の彩経であらわし、これをふた組の三重経にまとめ、交互に縞状にくり返す。すなわち一つは紫地に亀甲の直線部と花文の中心を緑とし、連珠と文様の輪郭を黄であらわし、他は紫地に亀甲の斜線部と花弁の左右端を浅紅とし、連珠と文様の縁を白く織り出している。従って顕文部は緑と浅紅の長斑風を呈している。
なお正倉院の古裂中には、図版と同じ文様を緯錦で織り成したるのも見られる。
朝日新聞社「正倉院宝物 染織」より引用

商品説明


仕様
70 亀甲花文錦 より
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