81 紅牙撥鏤撥 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

81 紅牙撥鏤撥 (こうげばちるばち)(北倉28)
螺鈿紫檀琵琶付属の撥である。象牙を紅色に染め、文様を白く彫り出した撥鏤細工によるものである。一面には蓮華唐草に乗る馬頭の怪鳥を置き、その下に鴛鴦、以下花卉・含綬鳥・花卉・双鳥(雀)・蓮華文を配している。上端には花雲と霊芝雲を、また全体の空隙には胡蝶を彫り表している。他面は上部より麒麟・山岳・含綬鳥・花卉・飛鳥・蓮華唐草に乗る鴛鴦を表し、麒麟の周りには花雲・花卉・蝶を回らし、他の空間には小さな蝶文を散らしている。撥の下部 (本方)稜 に沿っては宝相華文、他の三辺外周は細線を刻み文様を括っている。文様の所々に緑青を填め彩を添えている。
長さ20cm
日経新聞社「正倉院の文様」より引用
81 紅牙撥鏤撥 より
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