57 金銀平脱皮箱第4号 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

57 金銀平脱皮箱第4号(きんぎんへいだつのかわばこ)(中倉138)
皮製黒漆塗の箱である。文様は金と銀の薄板を截り器胎に貼り付け、黒漆に塗り込め、文様上の漆のみを剥ぎ取った平脱の技法によるもので、各稜角や口縁部には金平脱による連珠文、蓋中央には金と銀の連珠圏文を表し、その中に霊芝雲に乗る鳳凰を、連珠圏文の外には花枝を銜む六つがいの鳥を回らしている。四隅に花枝を銜えた尾長鳥を各二羽表している。取り面や口縁部には等間隔に大小の側花文を並べている。
横26.6cm
日本経済新聞社「正倉院の文様」より引用
57 金銀平脱皮箱第4号 より
円(税込)