56 紫皮裁文殊玉飾刺繍羅帯 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

56 紫皮裁文殊玉飾刺繍羅帯(むらさきがわさいもんじゅぎょくかざりししゅうらのおび)(中倉95)
白つむぎの上に淡褐色の羅を張って、全面に刺繍を施し、上下端と中間四箇所に、紫皮を忍冬形に切り抜いた裁文を縫い付けた帯である。
帯の縁は、紫、薄紫、白の三色を用いた丸打ちの組紐二本を、配色が矢羽根形になるように並べて、縁取りし、ところどころに緑、浅緑、黄、褐、縹などのガラス玉と真珠、水晶玉を絹糸に貫いた垂れ飾を付け、その先端は、金銅の萼を付けた露玉で飾っている。この玉の飾はもともと左右を飾ったものである。このような、縁に垂れ飾を付けた帯は他に類を見ないもので、用途は明らかでない。
長さ86cm 幅6.5~7cm
日経新聞社「正倉院の文様」より引用
56 紫皮裁文殊玉飾刺繍羅帯 より
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