50 赤地唐草襷唐花文錦 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

50 赤地唐草襷唐花文錦(あかじからくさたすきからはなもんにしき)紫地唐草襷唐花文錦(しきじからくさたすきからはなもんにしき)
同文異配色の二種の錦を継ぎ合わせて、弧形としたもので、どちらも複様三枚綾組織の緯錦である。
織り色は、右方の錦は、赤地に文様が白、黄、緑、縹、赤、紫、淡紫、左方のものは紫地で、文様は白、赤、紫、緑、縹の各色がみえる。経はどちらも淡い黄色である。右方の裂は左右が緯方向である。
文様は、ほぼ同形の主、副の唐花文と、その間隙を埋める花葉で綴る唐草とから成っていて、図に示されている唐花文は副文にあたるもの、また図の右端の尾長鳥は、主文の左右に配する双鳥の一部である。主、副の唐花文は、内外区の別がうすれて、その形は集花団文に近くなっている。
心は白氈、厚手で、長さ約51cm、表覆いの錦の下にさらに白絁を重ねる。図の上端部と裏面は心が露呈している。
同形のものがいま一枚あって、対をなするのと考えられるが、用途は明きらかでない。
朝日新聞社「正倉院宝物 染織」より引用

50 赤地唐草襷唐花文錦 より
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