47 黒柿蘇芳染金銀絵如意箱 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

47 黒柿蘇芳染金銀絵如意箱(くろがきすおうぞめきんぎんえにょいばこ) (南倉51)
前出図の鯨費金銀絵如意を納める箱である。印篭蓋造で、内部に如意を受ける枕木が二ヵ所にある。外面を飾るのは金銀絵花文で、蓋表の細長い面に割り付けられた四個の六角形複合花文を中心として、蓋側面から身側面へと、あたから織文で覆うかのごとく切れ目なく表されている。筆致も喝びやかで澱みがない。腰長押の押縁には金銅星形鋲を打ち、その四隅および畳摺の四隅にも金銅製で唐草文の毛彫のある角金具がつけられている。
また、内部は全面、枕木も含めて金泥で木理文が描かれている。
全高 7.84cm
日経新聞社「正倉院の文様」より引用
47 黒柿蘇芳染金銀絵如意箱 より
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