31 花氈 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

31 花氈(かせん)(北倉150-11)
蔓草を網目に交叉させ、全面に延べ広げた文様の長方氈で、網目には一株づつ小草花、辻には四弁花をおいた。地は白、四弁花の心は薄藍、花びらは薄紅、葉は藍、蔓と小草花は紅色だが褐色している。網文様の外回りには、紅色の小花を付ける薄緑の草花が巡らされ、また四周に薄紅の縁取りが施されている。
長さ233cm 幅131cm
朝日新聞社「正倉院宝物 北倉」より引用
31 花氈 より
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