29 金銀絵鏡 箱 より

■正倉院宝物とデザインについて
正倉院宝物は一度に成立したのではなく、何段階かに分かれて成立しており、成立過程も皇室からの献上品、東大寺独自の収蔵品、皇室以外からの献上品と様々である。
もっとも根幹をなすものは、聖武天皇の七七忌に光明皇后が天皇遺愛の品々ならびに皇后に縁のあるものを東大寺大仏に献上したものである。その後も若干の宝物が光明皇后から東大寺に都合五度にわたって献上された宝物は正倉院正倉の北倉に納められ、今日に伝えられている。
光明皇后が五度にわたって東大寺大仏に献上した時に副えられていた献物帳には、①国家珍宝帳 ②種々薬帳 ③屏風花氈等帳 ④大小王真跡帳 ⑤藤原公真跡屏風帳がある。「国家珍宝帳」とは正式に「東大寺献物帳」と呼ばれるべきものであるが、この献物帳の冒頭に「太上天皇の奉為に国家の珍宝を捨して東大寺に入るる願文」との文言による。
中倉、南倉の宝物には東大寺の千手堂や東小塔などに保管されていた宝物や元々東大寺に保管されていたもの、儀式に使用されていた宝物、献上物を入れた箱類がある。
これらの宝物に使われている文様を再現したのが天平文様シリーズである。

29 金銀絵鏡 箱(きんぎんえのかがみ はこ)(南倉71)
木製黒漆塗り、印籠蓋造の鏡箱で、蓋の表裏と外側面に金銀泥で文様が描いてある。
素地は針葉樹材で、ヒノキと思われる。蓋は板目取り、身は柾目取りの一枚板を轆轤にて挽き出している。蓋·身とも大面取りとし、身には立ち上がりを造り出している。今蓋は反り、身とよく合わない。
蓋·身とも外面から側面の内側にかけ布着せを行い、下地を施した上に黒漆を塗り、塗り立て仕上げとしている。
蓋表は、中央に金泥を主にした宝相花風の唐花文をおき、その上下に銀泥で、綬と花葉を銜えた飛鳥を描いて、取り面の部分は、四方に、金泥の花弁と銀泥の葉を持つ花文を覗かせている。また、中央の唐花文の左右にも、銀泥で文様が描かれていたが、銀絵が擦損して、かすかにその痕跡が認められるに過ぎない。
蓋裏は、中央に金泥で山岳を描き、樹木と、山をめぐる水は銀泥。またその上方には、金銀泥で雲と麒麟、下方には金泥で、二頭の走る獣を表わしている。さらにその外側の四箇所には、樹木がある丘陵を、金銀泥で描いている。金銀泥は剥落やかすれが多い。図に見えない外縁には、金泥で飛雲文が数筒所に描かれている。
径29cm 蓋の高さ2.2cm 身の高さは立ち上がりとも5cm 総高約3.6cm
朝日新聞社「正倉院宝物 南倉」より引用

商品説明

仕様

29 金銀絵鏡 箱 より
円(税込)